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マイナスセブンデイズ .59
JUGEMテーマ:小説/詩


4,峠重忠
 先に帰ることに決めた。二十二時を回った所だった。携帯電話がメールを受信した。いつものニュース速報、彼は中身も見ずに、おつかれ、と居残る同僚たちに構いもせずオフィスを後にした。まだ蒸し暑い。東京は変だと思った。普通ならこの頃合いは、日中は別としても朝夕くらいなら少しは過ごすにましな気候になっていたはずだ。普通なら。そう思い掛け、普通なら普通なら、と幾度か反芻してみたのだった。普通って、一体なんだよ。
 溜池の交差点でタクシーを拾う。
「すぐそこだけど、いい?」
 運転手は黙って頷いた。その様子を確認するや、今度はずけずけと後部座席に乗り込み手動ハンドル式の窓を開けて煙草に火を点けた。子供が生まれた時、それをきっかけに二年余りも止めていた。それにも関わらず、戻った。どうしようもない奴だと思った。煙草を吸う度に、自分のことをどうしようもない奴だと罵り嘲笑うのだった。一本吸い始めるたびに、小馬鹿にするのだった。忙しない事だ。クラクラしながら自己嫌悪に浸る。煙草が自傷行為以外の何ものでもない事を悟った。かさぶたを引っぺがすようなものだ。何かが駄目だから、己を痛めつけたくて煙草を吸う。
「曲がりますか?」赤坂通の手前で運転手が尋ねた。
「ああ。真っ直ぐ、交番の辺りまで行ってよ」
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